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原材料を輸入するための外貨稼ぎにとって「輸出」は不可避であり、最新鋭の設備のための投資は何にも増して優先された。
金融政策は輸出と設備投資をスムーズにさせることを目的としており、国際収支が赤字になって原材料輸入のための外貨が逼迫するまで、資金は設備投資から輸出ドライブというプロセスの中につぎ込まれていった。
1970年代に入ると恒常的な経常黒字となり、為替レートの調整を余儀なくされたが、基本哲学は引き続き「輸出と設備投資」を軸とした高度成長システムであった。
すなわち、低金利時代には重厚長大企業を中心とする企業が設備投資をおこなって生産を増やし、国内の需要で吸収できなくても輸出ドライブをかけて海外において製品を消化するというパターンを取りつづけていた。
企業の設備投資が金利上昇を実現させ、まさに景気が回復すると金利が上がるという定式が出来上がっていた。
そして大量の経常黒字が国内での資金余剰を生み出すとともに金利が低下に転じるという、金利循環が1980年代まで続いていた。
しかしながら、過剰設備投資と度重なる円高は日本経済の根幹ともいえる金利循環メカニズムを崩壊させた。
1994年には、設備投資の担い手として長い間、最大の資金不足部門として君臨しつづけた企業セクターがついに資金余剰基調となった。
企業のバブル時代の過剰設備投資は大量の減価償却を産んでいる。
いうまでもなく個人セクターは恒常的に資金余剰であったが、その規模はいまや1100兆円を越えるに至っている。
歴史上、富が一国に集中したのは19世紀の英国ビクトリア女王時代および第2次世界大戦後の米国といわれるが、今の日本の状況もこれらに十二分に太刀打ちできると言われている。
当時の英国・米国はともに巨大な経常収支黒字となり、金利は低水準を推移した。
しかし、同時に蓄積した富を積極的に海外に還流させた。
英国の場合にはナポレオン後の欧州の復興資金供給から始まり、中南米における鉱山開発等の投資、さらには南アフリカなどの植民地への投資が活発におこなわれた。
また、米国はマーシャル・プランに見られるように第二次世界大戦によって崩壊したョ-ロッパ復興のための資金を流した。
ところが今の日本は、資金を海外へ積極的に還流させる状況にない。
たしかに最近の個人投資家の外債ブームには目を見張るものがある。
1995年だけで3兆7千億円の個人資金が外債市場に向かったといわれている。
しかしながらこれら個人の資金の延長線上にある機関投資家は、1980年代からの急激な円高によって大きな損を被ったこともあり、海外投資にはまだまだ慎重な部分がある。
輸出・輸入のアンバランスを恒常的に作りだす諸々の規制、そのアンバランスを為替レートのシフトで調整するという伝統的な日本のシステム、また円の国際化が金利循環パターンが止まってしまうと日本型の金融システムは支障を起こす。
過去の歴史を顧みるに、機関投資家・金融機関の運用がこの金利循環パターンに身を任せる的なスタイルが多かったことは否めない。
すなわち、高金利局面において長期固定金利の資産を積み上げ、低金利地合いに突入するや限界運用部分は短期資産での運用に切り替え、金利上昇をひたすら待つというパターンである。
金利上昇を待つ状況では限界運用部分の期間収益は犠牲になるもの不十分であったこと、これらは必要以上にジャパンマネーの海外への還流を妨げている。
これらの規制の報いは大きい。
いずれにしてもパクス・ジャポニカの資金は国内において閉塞状態にある。
国内に資金が大量にあるからといっても、これが必要以上に株式・土地などに流入するとは考えづらい。
とすれば、結局は円金利ベースの資産を目指さざるをえないということになる。
この個人部門の資金蓄積は現状のところ増加傾向にある公共セクターの資金ニーズを吸収して余りある。
このバランスから見る限り、当面金利水準が大きく上がるとは考えづらい。
金利のゾーンは自ずと低位低迷に変わっていると考えるのが妥当であろう。
過去の高金利局面で積み上げた資産がそれを十分にカバーしてもなおあまりある高い金利を稼ぎだしてくれる。
そして期待通り、金利が上昇に転じた段階で短期資産を長期資産へと徐々に乗り換えていけばよいのだ。
国債の大量発行が始まった1975年以降、日本の長期金利は見事に上下循環の軌跡を描いた。
から解るように、日本の長期金利は1994年に至るまでは4%と9%との間のレンジでアップ・ダウンした。
この上下移動の波の中で、機関投資家・金融機関はすでに説明したパターンに従ってポートフォリオ運用を展開していったのである。
ところがここ数年、日本の金利の動きは必ずしもかつての循環論的な解釈では説明しきれないものとなっている。
たとえば、コール市場は金利上昇を展望した資金が一時的に滞留する場という性格が強いが、この資金市場の残高は1992年の段階で40兆円を上回った。
この当時の金利水準は過去の金利循環ゾーンから見れば、十分にボトムラインであり、ここからの金利上昇を予測した資金運用者が短期運用へ大きくシフトすることは当然の成り行きであった。
ところがその後の金利レベルは一段と低いゾーンに張り付いている。
伝統的な日本経済のシステムは恒常的な金利循環を生み出し、機関投資家・金融機関などの資金運用者はこの流れに乗れば一応の運用成果をあげることができた。
厳しい言い方をすれば、日本には本当の運用・投資ができあがっておらず、経営責任者も運用・投資に対しては本当の意味で経営リスクをとっているとは思われない。
ここでも「市場原理」と自己責任が十分に浸透しておらず、古来日本システムが延々と生きつづけているのである。
ところが日本経済のシステムにひびが入り、金利循環の神話が崩壊してしまった。
生命保険会社の予定利率や企業年金・厚生年金の予想配当などは市場金利に対して極めて非弾力的であり、金利低迷の局面では「市場原理」から大きく逸脱する。
しかしそれでも、もし仮に一定のインターバルでの金利循環が期待できるのであれば、保険・年金の運用者は何とか成果を出すことができよう。
株式市場の右肩上り現象に赤信号が点灯した今、「市場原理」が部分的にしか導入されていないコスト体系の資金運用者にとって最後の砦は、金利循環であるといっても過言ではない。
我々の老後を守るはずの年金制度が、いまだに伝統的な日本経済のシステムに裏打ちされた金利循環に依存せざるをえない状況にあると考えると背筋が寒くなる。
健全なマーケットに向けてスワップを縦軸にした日本経済システム論・日本金融システム論という大それた試みは粁余曲折を経ながらもなんとか終着駅に近づこうとしている。
これまでの展開の中で金利市場、信用格差、株式市場、さらには雇用体系に至るまで、デリバティブという魔法の杖が日本独自のシステムを欧米の基準に合致させるためのアダプター的な機能を果たしているということがおわかりいただけたのではないかと思われる。
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